貴方に・・・


 「……残暑、見舞い?」

 「はいッ」

 「こないだ暑中見舞いもろたとこやったと思うんやけど」

 「でも、そろそろ残暑見舞いの季節なんです」

 「そっか。季節行事は大事やもんな」

 貰った葉書を夕陽に翳し、太陽光が眩しいだけではないだろうけれども、細い目をさらに細めて
 マジマジとそれを見る劉さんは、なんだかいつもと違う人みたいで…。

 「はいッ」

 でも、元気に返事をするのが私のイイトコロだと言われたので。笑顔で返事をしました。

 なのに、劉さんは…

 「せやけども」

 葉書から目を逸らさずに。細めた目を時折瞬(しばた)かせながら…低い、声を漏らしたんです。

 「…?」

 「わざわざ届けに来てくれへんでええのに」

 ― さやかはんは、忙しいんやから。

 その言葉の奥で、本当に言いたかったコトが見え隠れしていました。…わかります。わかって…
 しまうんです。

 「私が…自分で、届けたいんです。顔が、見たいんです。声が、聴きたいんです」

 ― どんなに忙しくっても。どんなに大変でも。

 葉書を見たまま、私の顔を見ないまま、でも私は一生懸命、そんな劉さんに話しかけるんです。

 「……」

 「……」

 「…なァ……さやかはん」

 劉さんが、今は私を見てくれていたんですけど、

 「……はい」

 私は、なんだか上手く声が出なくて。弱々しい返事になってしまいました。

 「来てくれることが、イヤなわけやあらへんねん」

 「……はい」

 優しく説き伏せるような言い方が、なんだか今は、なんだかとっても…居心地が悪いんです。

 「ッちゅーか、むしろごっつぅ嬉しいんや?」

 「……ホントですかッ?!」

 そんな風に、はっきり言われることは滅多に無いので。

 「そや。けどなァ……」

 とても嬉しかったんです。でも、劉さんは困ったような、微妙な顔をして話を続けるんです。

 「”けど”…何、ですか?」

 「けど……なんちゅーかワイが独り占めしてたら、そのぶん、さやかはん…忙しなってまうやん?」

 !?そんなこと、そんなこと…

 「私、頑張れますっ!!!」

 「!?うわッ、ビックリしたわァ…いきなり大声ださんといて?な?」

 少し身を乗り出して、結構近くで声を張り上げてしまったことに、劉さんの台詞で気付きました…。

 「…す、すみません…」

 ああもう、私ってば…。

 「あ、いや…そんな縮こまらんでもええんやけど…そ、そや、ナニを頑張れるって?」

 そうです、私、頑張れるんです。大好きな人に逢いたいから。

 「…忙しくっても、頑張れますッ。…ううん、そうじゃなくて…頑張りますッ」

 ― だから

 ― …だから

 「だから、こうして逢いに来た時は…私の仕事の心配なんて、しないでください」

 ―私の後ろにあるものを、見ないでください。

 「私、劉さんに逢いに来たんですよ?」

 ― 逢いに来た時だけは

 ― 私だけを見てください。

 口に出さなかったものも、伝わればいいのにって。一生懸命劉さんの目を見て話しました。

 「うん、わかっとるよ」

 劉さんは、そこで一呼吸ついて、もう一度

 「わかっとるんやけど」

 繰り返しました。

 「じゃあ…」

 わかっているのに、どうして言うんですか?聞くんですか?

 きゅっと、自分の手を握り締めてしまったのは、何かを掴みたかったからでしょうか?

 その何かを待って…じぃっと、見つめていたら。

 「わかっとるから…ワイと逢うてへん時のさやかはんが、よけいに気になるんかもしれへんなァ…」

 さっきまでの真面目な顔が、困ったような照れ笑いに変わって。




 「………」


 私も、笑顔になれました。

 嬉しくて、どこか恥ずかしくて。

 でも

 今の私が出来る、一番いい顔を貴方に。







 劉さんの目が、本当に優しい光を宿している時に…傍に居るのが私であれますように。

 そんな願いも込めて。





Fin

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やっぱりワタクシにはムリでした………。

劉さや……好きなのですけどね。書くのはどうもダメっぽいですッ(>_<。)

おとなしく、他の方の素晴らしい劉さやを読んで過ごすことにします、っていうか最初からそうしとけ自分。

とんでもないお目汚しをしてすみませんでした〜!!(脱兎)

人に乗せられて書くもんじゃないですね(爆)。ね〜?●●サマ、後悔してるでしょう?(吐血)

●●サマって、楓実サマ、貴方のコトですよ?(笑)

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